インタビュー

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やなせさんとわたし
小松 計夫
小松 計夫(こまつ かずお)
有限会社ユニオン/代表取締役
やなせ先生の想いが込められたキャラクターを
いつまでも守っていきたい
Ⓒやなせたかし
南国市後免〜奈半利町の県東部を走る「土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線」の各駅には、やなせさんが手掛けたご当地キャラクターがいます。その制作を通じてやなせさんと交流を重ねた小松さんに、当時を振り返っていただきました。

ごめん・なはり線のキャラクター制作をやなせさんにご依頼することになったきっかけを教えてください。

話はごめん・なはり線が開通する以前にさかのぼります。高知県東部地域では長年にわたって鉄道開通を求める声がありましたが、世間からは「日本最後の赤字路線」というネガティブな風評を受けていました。
そんな悪い空気を変えることはできないかと、安芸市の商工会議所が勉強会などの会合を開くことになったんです。当時、青年部に所属していた私も参加していましたが、なかなか会合の熱量が高まらず、「このままでは何も残せずに終わってしまうのではないか」という危機感がありました。
そうした中でメンバーから「会合のシンボルになるキャラクターをつくってはどうか」という意見が出ました。私はとにかく前進できる何かがほしかったので、どなたかにキャラクター制作を依頼しようと思い、知人に相談したところ、偶然その知人が香美市香北町出身だったことから「やなせたかし先生にお願いできるかもしれない」と言ったんです。
私は全く面識がなかったので人づてにご依頼をしたのですが、やなせ先生は即答で「うん、いいよ!」とおっしゃってくださったと聞きました。私にとってはそれが逆にプレッシャーになりました(笑)。
しかし、今振り返ってみると、周囲からはネガティブな声が聞こえ、地域の熱量も下がっていた中で、ここまでこぎ着けることができたのは、やなせ先生がご快諾してくださったからだと感じます。

各駅に1体ずつご当地キャラクターがいるというのは、全国的にみてもめずらしい試みだったのではないかと思います。そのアイデアはどこから生まれたのですか?

当初はシンボルキャラクターを一つだけご依頼していたのですが、ごめん・なはり線の計画が進み、20駅(当時)できることをやなせ先生にお伝えしたところ、先生の方から「各駅に一体ずつ、20のキャラクターをつくろう」とご提案していただきました。それだけでなく、そのキャラクターをどんなふうに活用したら良いかや、オリジナルソングやイベントまでいろいろなアイデアをいただきました。
実はその頃、ごめん・なはり線に関わる正式な組織がつくられ、キャラクター制作のプロジェクトも私から別会社へ引き継がれていました。本来であれば私は関われないはずなんですが、やなせ先生はアイデアをどんどん書いては私に送ってくださいました。私もやなせ先生のお役に立ちたいと思い、駅がある地域の特長や特産品などが分かる資料を集めて先生にお送りしていました。 その後、キャラクター制作のプロジェクトに呼び戻されまして、完成までやなせ先生とご一緒できることになったんです。
余談ですが、私がやなせ先生と直接お会いしたのは、全てのキャラクターが完成してからのことです。それまでお電話やお手紙、FAXでたくさんやり取りしていましたが、初対面の時はとても緊張しました(笑)。
Ⓒやなせたかし
やなせさんが小松さんに宛ててFAXで送った、キャラクターのラフ画。活用方法などのアイデアもたくさん書かれている。

初対面の時はどんなお話をされたんですか?

一番にお礼をお伝えしました。そして、「やなせ先生に無理難題をお願いしましたが、私にはお金がなく、先生にお返しできるものが一切ありません。なので、これからこの体でお返していきます」とお伝えすると、先生は「キミに体で返されてもなー」と困ったご様子でした(笑)。
でも、それは冗談ではなく、これからもやなせ先生のお役に立ちたいという気持ちがあったんです。先生が高知にお越しになった際には空港でお出迎えやお見送りをし、やがて運転もするようになり、そうした高知でのサポートが私の会社の“仕事”になっていきました。
2001年、小松さんが初めてやなせさんと対面した時の写真。緊張する小松さんに対し、やなせさんは終始おだやかで優しかったそう。

やなせさんとご一緒する中で印象に残っていることはありますか?

やなせ先生の周りには、人がどんどん集まってきます。高知ではいつもハードスケジュールでしたのでサインなどはお断りしていたのですが、私の後ろから先生がひょこっと顔を出して「いいよー」と言いながらみんなにサインをしていました。やなせ先生は人を喜ばせる人生を貫いてこられた方なので、とにかく優しかったですね。
私はやなせ先生をサポートすることが仕事でしたので、サインをいただいたことは最後までありません。でも、私にはやなせ先生からいただいたたくさんのお手紙やFAXがあります。送迎の車中ではやなせ先生が歌をつくっていて、私は運転をしながらその鼻歌を聴いていました。そうしたやなせ先生との思い出の全てが、私の宝物になっています。

小松さんの会社では、ごめん・なはり線のキャラクター管理も業務の一つですよね。やなせさんが考えたキャラクターのイメージを守りながら、キャラクターを活用した地域振興の支えも担っていると思いますが、これからどのように取り組んでいきたいですか?

やなせ先生は「人を楽しませたい」という想いを持って、それぞれの駅のキャラクターを考えてくださいました。その想いを、いつまでも守っていかなくてはならないと考えています。
ドラマの影響でキャラクターを活用したいというお声をたくさんいただいており、これまでに経験したことがないような仕事量になっていますが(笑)、沿線が活性化していくように、そして、やなせ先生に「大事にしていますよ!」と胸を張ってご報告できるようにがんばっていきたいです。
【有限会社ユニオン】
高知県安芸市僧津627-1
電話 0887-35-4428
https://www.union-g.com(外部サイトへ)
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